王さまとお姫さま

彼との夜はいつだって最高で、朝を迎えるのが惜しいと思えるくらいだった。嫌がったって夜明けはやって来てしまうので、私は心地よい気だるさを身体に残したまま、朝日を浴びる。

ドリアンはねぼすけさんで、起きるのが私より少し遅い。だけど、私が今日の衣装はどれにしようかしらと選んでいる間に、ドリアンはいつの間にか服を着ていて、ベッドに腰掛けている。

昨日のことなんて全部忘れてしまったんじゃないかと思えるほど、傷一つない彼の横顔も、身体も、全部が妬いちゃうくらいとっても綺麗だった。私は戯れに衣装を彼にあてがってみる。フリルがいっぱいで動きにくくて、私の演技には向かないけれど、彼にはよく似合っていた。
「ねえ、貴方はお姫様にだってなれるんじゃない? 」
「そうかな」

ドリアンは私から服を受け取ると、身体にあてがったまま立ち上がって、くるくるとターンする。最後にドレスの裾を持ち上げて、うやうやしく礼をした。
「王子様。私を迎えに来てくださらない? 」
もちろん! たくさんの拍手を彼に送る。私一人の拍手が、彼に降り注いだ。

あぁ、なんて素敵なおはなしでしょう!

彼に拍手を送るのは私だけ。女の子みたいに大きくてまんまるな瞳も、華奢だけどそれでいて私をしっかり包み込んでくれるその腕も、全部ぜんぶ、わたしだけのものなのだ。

執筆:20181027 公開:20241110